「もう明日から行きたくない」。そんなとき退職代行は強い味方だが、実は3種類あり、できることが法律で大きく違う。安さだけで選ぶと「結局、有給も未払い分も交渉してもらえなかった」となりがちだ。
結論(早見)
選ぶ軸はシンプル。会社と「交渉」が必要かで決まる。退職を伝えるだけなら民間業者でも足りるが、有給消化・未払い残業代・退職日や離職票で揉めそうなら労働組合型か弁護士型を選ぶ。理由は、民間業者が会社と条件交渉をすると非弁行為(弁護士法72条)の疑いが生じるからだ。
3タイプ比較
| タイプ | できること | 料金の目安 | 向く人 |
|---|---|---|---|
| 民間業者 | 退職の意思を伝えるのみ(交渉は不可) | 1〜3万円 | 揉めず、ただ辞めたいだけ |
| 労働組合型 | 団体交渉で有給・退職日などを交渉できる | 2〜3万円+組合費 | 有給消化や退職日を調整したい |
| 弁護士型 | 交渉+未払い賃金・損害賠償の請求・訴訟まで | 5〜10万円+成功報酬 | 未払い・損害賠償などトラブル必至 |
料金は2026年6月時点の一般的な相場(編集部整理)。実際の対応範囲・費用は各社で必ず確認を。
もっと深く:なぜ「交渉できる/できない」が分かれるのか
そもそも退職はあなたの権利だ。期間の定めのない正社員なら、退職の自由(民法627条)により申し入れから2週間で雇用は終了する。会社の承諾も、就業規則の「1か月前」も、原則この法律には勝てない。だから「辞めると伝える」だけなら、本人でも民間業者でも法律上は足りる。
問題は交渉だ。「有給を全部使わせて」「未払い残業代を払って」と会社と条件を詰めるのは法律事務にあたる。報酬を得てこれを代行できるのは原則弁護士だけ(弁護士法72条)。民間業者がやると非弁行為の疑いが生じる。労働組合は例外で、憲法28条・労働組合法が保障する団体交渉権を根拠に、組合員のために会社と交渉できる。これが「労働組合型」が選ばれる理由だ。
よくある誤解
- 「退職代行を使うと会社に訴えられる」
- 退職は労働者の権利で、代行を使ったこと自体は違法ではない。ただし引き継ぎを放棄して実害が出たなどの例外的ケースは別途検討を。
- 「弁護士型が一番だから常にこれ」
- 料金が高く、揉め事が無いなら過剰。トラブルの有無で選ぶのが合理的。
- 「民間でも交渉してくれる」
- うたっていても非弁の疑い。交渉が要るなら組合型か弁護士型を。
用語
- 退職の自由(民法627条)
- 期間の定めのない雇用は、申し入れから2週間で終了できる。
- 非弁行為(弁護士法72条)
- 弁護士でない者が報酬を得て交渉・請求などの法律事務を業とすること。禁止される。
- 団体交渉権
- 労働組合が使用者と労働条件を交渉する、憲法28条が保障する権利。
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の事情や最新の運用は、弁護士・労働組合・所管窓口など一次情報でご確認ください。