iDeCoは「積み立てる時」ばかり語られるが、手取りを本当に左右するのは“受け取り方”。同じ残高でも、一時金か年金か、退職金とどちらを先に受け取るかで、税金は数十万円変わる。しかも2026年1月の改正で、重要な「順番ルール」が変わった。
結論(早見)
受け取りは大きく3通り。①一時金(退職所得控除を使う)、②年金(公的年金等控除を使う)、③併用。退職金が少ない/ない人は一時金が有利になりやすい。退職金が多い人は受け取る順番と時期がカギで、2026年1月の改正により、iDeCoを先に一時金で受け取ってから退職金まで「10年」あけないと控除が重なって減る(旧「5年ルール」→新「10年ルール」)。
3つの受け取り方(比較)
| 受け取り方 | 使う控除 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①一時金 | 退職所得控除+1/2課税 | 退職金が少ない/ない人 | 退職金と受取時期が近いと控除が重複目減り |
| ②年金(分割) | 公的年金等控除 | 公的年金が少ない時期に受け取れる人 | 国民年金・厚生年金と合算で枠を食う/口座管理手数料が続く |
| ③併用 | 両方 | 残高が大きい人 | 設計が複雑。順番と時期の最適化が要 |
退職所得控除の計算(一時金のとき)
| 加入(勤続)年数 | 控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(年数 − 20) |
例:iDeCo加入30年なら控除は 800万+70万×10=1,500万円。残高がこの枠に収まれば、一時金部分の所得税・住民税はゼロに近づく。超えた分も「(残高−控除)×1/2」だけが課税対象(分離課税)なので、税負担は比較的軽い。
もっと深く:2026年改正「10年ルール」の正体
iDeCoを先に一時金で受け取り、その後に会社の退職金を受け取る場合、退職所得控除は「加入期間と勤続期間の重なり」を二重に使えないよう調整される。改正前はこの調整対象が「退職金を受け取る年の前年以前4年内」(5年ルール)だった。定年延長で“iDeCoを60歳で受け取り、65歳超で退職金”という人が増え、5年では足りなくなったため、令和8年(2026年)1月1日以後は「前年以前9年内」(10年ルール)へ拡大された。つまり控除をフルに使うには、iDeCo一時金から退職金まで実質10年あける必要がある。
逆に退職金を先に受け取り、後でiDeCoを一時金にする場合は、2022年以降の「前年以前19年内」(19年ルール)が効く。こちらは実質20年あけないと重複調整に入るため、多くの人には現実的でない。結果として、退職金が多い人は「iDeCoを先に受け取り、その後の退職金まで間隔をあける」か、「iDeCoを年金で受け取って退職所得控除の取り合いを避ける」かの設計になりやすい。
年金で受け取るときの落とし穴
iDeCoを年金(分割)で受け取ると公的年金等控除が使えるが、これは国民年金・厚生年金と同じ枠を共有する。65歳以上なら公的年金等の収入が一定以下のとき最低110万円、65歳未満なら60万円までが控除されるが、公的年金が満額入ってくる時期にiDeCoを重ねると、控除枠をはみ出して課税が増えやすい。公的年金の受給が始まる前(例:60〜64歳)にiDeCoの年金を受け取り切ると、枠の競合を避けやすい。また年金受取は口座管理手数料が続く点も計算に入れたい。
よくある誤解
- 「一時金は全額に税金がかかる」
- 違う。まず退職所得控除を引き、さらに残りの半分だけが課税対象(分離課税)。控除内に収まれば実質ゼロも珍しくない。
- 「別の年に受け取れば必ず別枠」
- 違う。受取の順番と間隔(5年/10年/19年ルール)で控除が重複扱いになる。年をまたいでも近ければ目減りする。
- 「iDeCoは早く受け取るほど得」
- 一概に言えない。退職金との順番・公的年金の開始時期しだいで、むしろ遅らせた方が手取りが増えることもある。