家を買うとき、ほとんどの人が最後まで迷うのが「固定にするか、変動にするか」。2026年は日銀が約30年ぶりの利上げに動き、“金利のある世界”に戻りました。「変動が一番おトク」という長年の常識が、揺らぎ始めています。
結論(早見)
ざっくり言えば——金利が上がっても返済が増えない安心を買うのが全期間固定(フラット35など)、今の低さを取りに行き、上昇リスクは自分で背負うのが変動です。2026年6月時点で、フラット35の最も多い金利は年3.21%(団信込)、ネット銀行の変動はおおむね年0.7〜1.0%。差は約2%ありますが、その差は“保険料”であって“損”ではありません。
固定 vs 変動 早見表
| 観点 | 全期間固定(フラット35など) | 変動金利 |
|---|---|---|
| 今の金利 | 高い(約3%前後・団信込) | 低い(約0.7〜1.0%) |
| 金利上昇リスク | 借り手は負わない(完済まで一定) | 借り手が負う(上がれば負担増) |
| 毎月の返済額 | 最後まで一定で読める | 原則5年ごと見直し・将来は不確実 |
| 向く人 | 返済額を固定したい/長期で家計が動く(教育費等) | 上昇に耐える余力がある/繰上返済できる |
| 主な注意点 | 当初の負担が重い/借換えに手間 | 「5年・125%ルール」の有無と短プラ動向を要確認 |
表は一般的な傾向です。金利・条件は金融機関ごと、また時期によって変わります。
深掘り:なぜ2026年に“常識”が揺れたのか
日本銀行は2025年12月に利上げを実施し、政策金利は0.75%へ。これは1995年9月以来、約30年ぶりの水準です。変動金利の基準となる短期プライムレートも2026年に入って上昇に転じ、各行の変動金利は“適用1%時代”に入りました。長期金利(10年国債)の上昇を受け、全期間固定のフラット35も6月に年3.21%(団信込・最頻値)へ切り上がっています。つまり固定も変動も上がっているのが今の局面です。
変動の落とし穴:5年ルール・125%ルールと未払利息
多くの銀行の変動金利には、急な負担増をやわらげる“激変緩和”の仕組みがあります。金利が上がっても5年間は毎月返済額を据え置く(5年ルール)、見直し時も前の返済額の1.25倍までしか上げない(125%ルール)というものです。一見やさしい仕組みですが、落とし穴があります。据え置かれているのは“返済額”であって“利息”ではないため、金利が大きく上がると、毎月の返済の中で利息の割合が増え、元金が減りにくくなります。場合によっては利息が返済額を上回り、払いきれない未払利息が積み上がることもあります。さらに、ネット銀行の一部にはこの5年・125%ルールが無い商品もあり、その場合は金利上昇がそのまま返済額に反映されます。借りる前に必ず確認すべき一点です。
固定の落とし穴:当初負担と“下がったとき”
固定の弱点は、なんと言っても当初の金利(=毎月の負担)が重いこと。借入直後の家計を最も圧迫します。また、将来もし金利が下がっても固定は下がらないため、その時は借換えを検討することになり、手数料や手間がかかります。一方で、返済額が完済まで1円も変わらない“読めること”の価値は、教育費や転職など家計が動くライフステージでは特に大きくなります。
判断のものさし(3つの問い)
- 1. 金利が2%上がったら、返済を続けられる?
- 変動で“無理”なら、その差額は固定で“保険”として払う価値がある。家計の余力が判断軸。
- 2. 繰上返済できる見込みは?
- 早く元金を減らせる人ほど、上昇リスクにさらされる期間が短く、変動の低金利メリットを取りやすい。
- 3. 返済額が変わると、夜眠れなくなる?
- 不確実さのストレス耐性は人それぞれ。“読める安心”に価値を感じるなら固定は合理的な選択。
用語
- 5年ルール
- 変動金利で金利が上がっても、5年間は毎月の返済額を据え置く仕組み。商品により無い場合がある。
- 125%ルール
- 返済額の見直し時、直前の1.25倍を上限とする仕組み。急な負担増を抑える反面、未払利息が生じうる。
- 未払利息
- 返済額の上限ルールにより、毎月の返済で利息を払いきれず繰り越される利息。元金が減らない原因になる。
- 団信(団体信用生命保険)
- 返済中の死亡・高度障害で残債が完済される保険。民間ローンは必須が多く、フラット35は任意。