親が亡くなって、借金が見つかった——。そんなとき相続人を守る制度が相続放棄。ただしタイムリミットは原則「知った時から3か月」。何もしないまま過ぎると、借金ごと引き継ぐ単純承認が成立しうる。
結論(早見)
相続放棄は家庭裁判所への「申述」で行う(民法938条)。書類は郵送でも提出でき、費用は収入印紙800円+連絡用の郵便切手。期限は自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月(民法915条・熟慮期間)。受理されると初めから相続人でなかったことになり(民法939条)、借金もプラスの財産も一切引き継がない。調査が間に合わないときは、同じ家庭裁判所に期間伸長の申立てができる。
3つの選択肢
| 選択肢 | 引き継ぐもの | 手続き | 向くケース |
|---|---|---|---|
| 単純承認 | すべて(借金も) | 不要(3か月の経過でも成立) | プラスの財産が明らかに多い |
| 限定承認 | プラスの範囲内でのみ借金を弁済 | 相続人全員で家裁に申述 | プラスかマイナスか不明 |
| 相続放棄 | 何も引き継がない | 各自単独で家裁に申述 | 借金が明らかに多い・関わりたくない |
深掘り:手続きは5ステップ
①財産調査。預貯金・不動産に加え、借金は信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への開示請求で把握できる。②書類準備。相続放棄の申述書、被相続人の住民票除票(または戸籍附票)、申述人の戸籍謄本など(続柄により追加の戸籍が必要)。③提出先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。郵送可。④家裁から届く照会書に回答する。⑤相続放棄申述受理通知書が届いて完了。債権者への説明はこの通知書(または受理証明書)の写しで足りることが多い。
よくある落とし穴
遺産に手を付けると放棄できなくなる。預金を解約して使う、車や家の名義を変えるなどの「相続財産の処分」は法定単純承認とみなされうる(民法921条)。判断が分かれる行為(葬儀費用の支出・形見分けなど)は、迷ったら手を付けずに専門家へ。また、自分が放棄すると次順位の法定相続人(親→きょうだい)へ相続権が移る。借金も一緒に移るため、トラブル防止には親族への一報を。3か月経過後でも、借金の存在を知らなかったことに相当の理由があれば受理される余地はあるが(最高裁昭和59年4月27日判決)、ここは弁護士に相談すべき領域。
プラスの財産を相続する側の話(税金がいくらからかかるか)は相続税はいくらからを参照。
※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。期限や有効性の判断は個別事情で異なるため、迷ったら早めに弁護士・司法書士へ。手続き・費用の最新情報は裁判所の一次情報を確認してください。
用語
- 熟慮期間
- 単純承認・限定承認・相続放棄を選ぶための3か月間。家裁への申立てで伸長できる。
- 申述
- 家庭裁判所に意思を申し立てる手続き。相続放棄は「申述書」の提出で行う。
- 法定単純承認
- 遺産の処分などをすると、本人の意思に関係なく単純承認したとみなされるルール(民法921条)。
- 受理通知書
- 家裁が申述を受理したことを知らせる書面。債権者対応の基本資料になる。