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家族信託は必要?費用・デメリットと「成年後見・遺言」との違い

認知症で口座も実家も凍結される前に。家族へ管理を託す仕組みを、信託法と法務省の一次資料で整理する。

更新 2026-06-15

#相続#法律#お金#認知症対策#終活

「親が認知症になったら、預金も実家も“凍結”される」——これは脅しではない。本人の判断能力が下がると、銀行口座は事実上ロックされ、家を売ることも、まとまった出費もできなくなる。家族信託は、その凍結を防ぐために元気なうちに結んでおく契約だ。怖がらせるためでなく、選択肢を正しく並べるために。

結論(早見)

家族信託は「認知症で資産が凍結される前に、信頼できる家族へ管理権限を渡しておく」仕組み。民事信託の一種で、委託者(親)・受託者(子など)・受益者(多くは親本人)の三者で成り立つ。よく比較される制度を、効力が及ぶ“時期”で並べると違いがはっきりする。

元気なうち判断能力の低下(認知症)相続(死亡後)家族信託契約時から承継まで一気通貫任意後見監督人の選任で効力発生法定後見低下後に家裁へ申立遺言死後の配分のみ※効力が及ぶ時期のイメージ(編集部整理 2026-06)
比べる軸家族信託法定後見任意後見
いつ始まる契約時(元気なうち)低下後に家裁へ申立契約は元気なうち/効力は低下後
財産の積極運用・組換え信託目的の範囲でできる原則できない(保全が基本)できる範囲が限られる
認知症後の自宅売却受託者の判断で可能居住用は家裁の許可が必要同意・許可のハードルあり
死亡後の承継先の指定二次相続以降も指定可(受益者連続)できないできない
監督・継続コスト任意(信託監督人を置ける)後見人報酬が継続発生任意後見監督人が必須

深掘り:誤解と要点

「家族信託=節税」は誤解。信託しても課税上の所有者は受益者のままで、相続税が直接減るわけではない。家族信託の本丸は“凍結回避”と“柔軟な承継”。節税は生前贈与遺言と役割が違う。

後見との一番の差は「攻めの管理」ができるか。法定後見は本人保護が目的なので、財産は基本“守る”運用に縛られ、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が要る。家族信託なら、信託契約で定めた目的の範囲で、受託者が実家の売却や建替え・資金組換えを進められる。

家族信託の弱点も直視する。(1) 身上監護(介護施設の入所契約など本人の身の回りの法律行為)はカバーしない——ここは後見の領分。(2) 設計を誤ると“争続”の火種になり、組成には司法書士・弁護士・税理士の関与で数十万円規模の初期費用がかかることが多い。(3) 受託者が暴走しないよう、信託監督人や定期報告の設計が欠かせない。家族信託と任意後見を併用して弱点を補う設計も実務では一般的だ。

委託者・受託者・受益者
財産を託す人・託されて管理する人・利益を受ける人。家族信託では「親=委託者兼受益者/子=受託者」が典型。
受益者連続信託
「最初は配偶者、次は子へ」と、二次相続以降の承継先まで指定できる仕組み(信託法91条)。遺言ではできない設計。
信託監督人
受託者がきちんと職務を果たすか見張る役。受益者を守るために任意で置ける。
【免責】本記事は一般的な情報提供であり、法務・税務の個別アドバイスではありません。家族信託の組成には専門家(司法書士・弁護士・税理士)への相談を。制度内容・税の取扱いは改正されることがあり、最新は一次情報をご確認ください。

参考文献・出典

  1. 信託法(平成18年法律第108号)受益者連続信託(第91条)ほか. e-Gov法令検索 信託法
  2. 民法(居住用不動産の処分の許可=第859条の3 ほか). e-Gov法令検索 民法
  3. 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」. moj.go.jp/MINJI/minji95.html
  4. 法務省「任意後見制度について(Q16〜Q20)」. moj.go.jp/MINJI/a03.html
  5. 費用・実務の相対評価は編集部整理(2026-06)。

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