会社を辞めると保険証は返す。だが日本は国民皆保険なので、翻日からどこかに入る義務がある。選択肢は3つしかなく、しかも手続きの締切が短い。金額は人によって逆転するので、「決まり方」を知るのが一番早い。
結論(早見)
- 家族の健康保険の扶養に入れるなら、それが最強。保険料はゼロ円。まずここを検討する。
- 会社都合・雇い止めなどの非自発的離職なら、国保が一気に安くなる。前年の給与所得を 30/100 とみなす軽減がある。
- 退職時の給与が高い人・扶養する家族が多い人は、任意継続が安い。任意継続には上限があり、家族が何人いても保険料は増えない。
- 締切:任意継続は資格喪失日(退職日の翻日)から20日以内、国保は14日以内。過ぎると選べなくなる。
- どちらも見積もりは取れる。市区町村の国保窓口と、加入していた健保の両方に聞いて比べるのが正解。
| 扶養に入る | 任意継続 | 国民健康保険 | |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 0円 | 退職時の標準報酬月額×料率(全額自己負担) | 前年の所得と世帯人数で決まる |
| 上限 | — | 標準報酬月額 32万円(協会けんほ・令和8年度) | 自治体毎の賦課限度額 |
| 家族分 | — | 何人いても増えない | 人数分の均等割が乗る |
| 期間 | 条件を満たす間 | 最長2年 | 制限なし |
| 申請期限 | 速やかに(勤務先経由) | 資格喪失から 20 日以内 | 14 日以内 |
| 弱点 | 収入要件を超えると外れる | 2年間原則値下がりしない | 退職1年目は前年所得で高くなりがち |
もっと深く
任意継続の金額は「上限」で決まる。任意継続被保険者の保険料は、退職時の標準報酬月額に都道府県の保険料率を掛けた額。これまで会社が半分持っていたので、給与明細の健康保険料のおよそ2倍になる。ただし上限があり、協会けんぽでは令和8年度(2026年度)の標準報酬月額の上限は32万円(令和7年3月分までは30万円だった)。つまり月額50万円でも100万円でも、保険料は32万円の等級で頭打ちになる。高給だった人ほど、任意継続は相対的にお得になる。
国保は「去年のあなた」に課税される。国民健康保険料は前年の所得を基に計算される。だから退職1年目は「収入はゼロなのに保険料はフル額」という酷なことが起きる。ここで効くのが非自発的失業者の軽減。倒産・解雇・雇い止めなどで離職し、雇用保険の受給資格者証の離職理由コードが該当すれば、前年の給与所得を 30/100 とみなして保険料を計算してもらえる(離職の翻日の属する月から、その年度の翻年度末まで)。自己都合退職でも、特定理由離職に当たれば対象になりうる。黙っていては適用されない。窓口で申し出る。
家族の人数で反転する。国保には一人あたりの均等割があるので、配偶者と子供を抱えていると人数分だけ積み上がる。一方任意継続は被扶養者が何人いても保険料が変わらない。子育て世帯で任意継続が選ばれやすいのはこのためだ。
「1年目任意継続→2年目国保」という手。かつて任意継続は事実上抜けられなかったが、2022年の改正以降は本人の申し出でやめられる。退職1年目は前年所得が高いので国保が高く、2年目は所得が下がって国保が安くなる——なら、その境目で乗り換える。任意継続の保険料は原則2年間変わらないので、放置すると損をすることがある。
扶養に入るなら、失業給付との兼ね合いに注意。被扶養者の収入要件は原則年収130万円未満(60歳以上・一定の障害がある場合は180万円未満)。この「収入」には雇用保険の基本手当も含めて見るのが一般的で、日額が大きいと受給中は扶養に入れない。ただし認定の運用は保険者(健保組合・協会けんぽ)ごとに違う。家族の勤務先経由で先に確かめる。失業給付の額は失業保険はいくら・いつまでを。
払った保険料は全額控除できる。任意継続も国保も、納付額は社会保険料控除の対象。年内に再就職しなければ確定申告で戻る可能性があるので、領収書・納付証明書は全部取っておく。なお、どの制度に入っても高額療養費制度は使える。医療費の天井は、辞めてもなくならない。
用語
- 任意継続被保険者
- 退職後も在職中の健康保険に最長2年続けて入れる制度。保険料は全額自己負担。
- 標準報酬月額
- 社会保険料の計算に使う、給与を等級に丸めた額。
- 均等割
- 国保保険料のうち、所得に関係なく一人あたりでかかる部分。世帯人数が多いほど重くなる。
- 非自発的失業者の軽減
- 倒産・解雇等で離職した人の国保保険料を、前年の給与所得を 30/100 とみなして計算する措置。